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「Matrice 300 RTK」と橋梁点検


ドローンメーカーであるDJIは、2020年5月7日に新たな産業用ドローン「Matrice 300 RTK」と、新たなカメラ「Zenmuse H20 / H20T」の発表を行いました。

この記事では橋梁点検の現場で、現行機種に対する「Matrice 300 RTK」の優位性を可能な限り推察したいと思います。



■最大3台のカメラが制御可能に

「Matrice 300 RTK」では最大3台(機体上部に1台、機体下部に2台)のカメラの同時制御が可能になり、先代の「Matrice 210 RTK V2」と比較すると制御できるカメラが1台増加しました。ただし、すべての挙動を制御できるというわけではなく、例えば全てのカメラで同時に撮影する事は出来ないようです。

全てのカメラで同時に撮影できないという問題点は、それぞれのカメラで撮影するタイミングを少しずつずらせば、ほとんど同時に撮影できそうな気がします。ただ、3台のカメラを同時に制御できる事は一見素晴らしい事のように思いますが、橋梁点検の現場で3台のカメラが必要となるシーンは果たしてあるのでしょうか?

例えば「Matrice 300 RTK」では先代の「Matrice 210 RTK V2」と同じく機体上部にカメラを1台取り付けられるため、橋梁点検の現場においては橋の下から床版などの部材を撮影する場面でとても有効だと思います。しかし、この場面では機体下部にカメラを1台あるいは2台取り付けたところで、機体下部のカメラを制御する事はほぼ無いものと考えられ、「Matrice 300 RTK」の“最大3台のカメラが制御できる”という強みが活かしきれないように思います。また、この場面のみで考えた場合、既に「Matrice 210 RTK V2」を活用しているユーザーが新たに「Matrice 300 RTK」を導入するメリットは薄い気がします。


「Matrice 210 RTK V2」ユーザーが敢えて「Matrice 300 RTK」を導入するとしたら、それは「Matrice 300 RTK」と同時に発表された新型カメラ「Zenmuse H20シリーズ」のうち「Zenmuse H20T」に興味を持ち、導入を検討した場合だと思われます。「Zenmuse H20T」はズームカメラとサーマルカメラの機能を併せ持った「Zenmuseシリーズ」で初めてとなるハイブリッドなカメラであり、今までズームカメラとサーマルカメラの2台体制で点検業務に臨んでいたユーザーにとってはカメラを1台に減らせる可能性があり、下記に示すようなメリットを享受できるものと思われます。


*カメラが1台で済むのでドローン全体でみた時の総重量を削減できる *カメラ2台体制と比較するとバッテリー駆動時間が多少改善される *カメラ2台体制と比較すると障害物などへの衝突やその他のリスクを低減できる


ここだけを見ると「Matrice 300 RTK」を買わずに「Zenmuse H20T」のみ購入すれば良いような気もしますが、「Zenmuse H20シリーズ」はプレスリリースや公式サイトを読む限りでは「Matrice 300 RTK」以前のドローンでは使用できない可能性があるため、結局のところ「Matrice 300 RTK」とセットで購入する事になるかもしれません。

その一方で、「Matriceシリーズ」を導入していない、あるいは「Matrice 210 RTK V2」以前の産業用ドローンを所有しているユーザーが今後ズームカメラとサーマルカメラを必要とする点検業務への参入を計画している場合は、「Matrice 300 RTK」と「Zenmuse H20T」のセット購入は十分選択肢に入るのではないでしょうか。



■進化したデュアル送信機モード

「Matrice 300 RTK」以前の産業用ドローンでも使われていた技術である《デュアル送信機モード》は、「Matrice 300 RTK」ではさらなる進化を遂げ、《デュアルオペレーターモード》となって実装されました。

《デュアル送信機モード》とはマスター・スレイブ(主従関係)を設定した2台の送信機を使用して1台のドローンを制御する機能です。どちらの送信機でもドローンの制御を行う事が出来るものの、原則的にマスター側の制御が優先されており、マスター側が制御している間はスレイブ側で同じ制御を行う事が出来ないようになっています。例えば、カメラの角度をマスター側で調整している間、スレイブ側の送信機ではカメラの角度を制御する事が出来ません。

一方、「Matrice 300 RTK」の《デュアルオペレーターモード》は片方の送信機に操縦の優先権を付与しつつ、両方の送信機に対して各種アクセス権を付与する機能のようです。もう一方の送信機へ優先権を譲渡する場合、一括して渡す事も少しずつ渡す事もできるので、新しいドローンパイロットの訓練や不測の事態などの場面でもドローンの墜落を免れる可能性があります。


橋梁点検の現場で「Matrice 300 RTK」を、《デュアルオペレーターモード》を活用するとしたら、どのような場面がよろしいでしょうか?

現物が無いので実際のところどうなのかは分かりませんが、橋長が300mを超えるような橋梁で橋梁側面の主構トラスなどの部材や、橋の下から床版などの部材を端から端まで撮影するような場面では《デュアルオペレーターモード》を有効に活用できるのではないかと考えています。

300mという数値の根拠は視力1.5のドローンパイロットが空を背景にして目視で確認できる距離が150m程度という話をどこかで聞いた覚えがあり、同条件で2人のドローンパイロットが1つのドローンを目視確認できるギリギリの距離で向かい合ったら大体300mぐらいになるなぁ、と考えた次第です。

逆に橋長が300mに満たない橋梁では《デュアルオペレーターモード》はあまり活用出来ないような気がします。ただ、この場合でも万が一の事態を想定して《デュアルオペレーターモード》を活用するのは有りだと思います。



■結論


*ドローンに搭載するカメラを「Zenmuse H20T」1台に抑えたい! *サーモカメラやズームカメラを使用する点検業務に新規参入したい! *《デュアルオペレーターモード》を橋梁点検に取り入れたい!


橋梁点検の現場で「Matrice 300 RTK」の導入を検討している方がいましたら、上記3点のうち1点でも満たしたのなら真剣に検討してもいいかもしれません。

今回取り上げた項目以外の「Matrice 300RTK」及び「Zenmuse H20シリーズ」のスペック等は下記のリンク先をご参照下さい。



Matrice 300 RTK – Built Tough. Works Smart. – DJI

https://www.dji.com/jp/matrice-300


Zenmuse H20 Series – Unleash the Power of One – DJI

https://www.dji.com/jp/zenmuse-h20-series



※今回の記事については公開されているカタログスペックからの推察となります。

※記事中の画像はDJIの各カタログページ(上記参照)より

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